家族が自然と集う、柔らかなつながりの空間
山崎さん家族が家づくりを考え始めたとき、大切にしていたのは、家族みんなが自然と集まり、同じ時間を共有できる住まい。「ただ一緒にいるだけではなく、リビングでそれぞれ好きなことをしていても、お互いの存在を感じられる場所が欲しいと考えていました」と妻の晶子さん。そんな思いを抱えながらも、具体的にどの設計会社に依頼するか、どんな形で理想を実現するかには悩みがあったといいます。いくつかの設計会社を訪ね比較していく中で、決め手となったのは、夫・健二さんのひと言。「普段はあまり自己主張をしない夫が、“自分たちの理想を一番理解してくれているのは五割一分だ”と強く言ったんです」と晶子さんは振り返ります。家族全員が納得できる空間を形にするまでのプロセスは、設計チームと山崎さん家族の間で築かれた信頼関係があったからこそ、スムーズに進んだのだと感じさせられます。
家族を繋ぐ土間の役割
玄関を開けると、まず目に飛び込むのは薪ストーブのある広い土間。この場所は、家族が自然と集まり、暮らしの中心になっている空間です。「土間と薪ストーブが家の中心にあることで、家族全体が一つに繋がっているように感じます」と健二さん。薪の管理や靴の手入れ、自転車のメンテナンスなど、多目的に活用される土間は、リビングやダイニングにいる家族とも自然につながる場として機能しています。
家のレイアウトは、玄関土間を中心に北側に夫婦の寝室とクローゼット、南側にLDKや水回り、子ども部屋を配置する形で設計されました。土間を挟むレイアウトについて、「最初は靴をその都度履き替えるのは面倒かも」と心配していたそうですが、渡り廊下になる部分に小さなラグを敷くことでその問題も解決。「玄関マットくらいのサイズに、クヴァドラのラグを選んだのは思い切った決断でしたが、あの時、簡単なもので済ませなくて本当に良かった」と健二さんは満足そうに語ります。デンマーク生まれのテキスタイルブランドであるKvadrat〈クヴァドラ〉は、品質とデザイン性の高さからヨーロッパでトップシェアを誇る存在。シンプルながらも、この家の雰囲気を引き立てる存在です。
家族それぞれの楽しみ
新しい住まいに暮らし始めてから、晶子さんの新たな趣味となったのが庭づくり。以前は植物を育てることにそれほど関心がなかったそうですが、「新しい家に庭ができたことで、その魅力に引き込まれました」と話します。「最初は手探りで、何度も失敗して枯らしてしまうこともありました。でも、花が咲いた時は本当に嬉しくて、思わず“おはよう”って話しかけてしまうくらい(笑)」。晶子さんにとって、今や庭は特別な癒しの空間になっています。この庭はリビングの窓からよく見えるため、室内にいてもその存在を感じることができます。それぞれが好きなことをしながらも、自然と家族のつながりを意識できるこの住まいに、庭の風景が奥行きのある暮らしをもたらしています。
一方、長男の塁くんは今はバスケットボールに夢中。休日には練習や試合に参加し、家族でその活躍を見守る時間が増えました。「学校の友達ともつながることができて、日々楽しんでいるようです」と健二さん。リビングには健二さんが取り付けたバスケットゴールも設置されており、塁くんのお気に入りの場所となっています。
新しい家がもたらす日常の変化
新しい家での暮らしが始まると、家族の習慣にも自然な変化が生まれました。「以前はソファで寝落ちしてしまうこともありました。でも、この家に住むようになってからは、ちゃんとベッドで寝ようと思えるようになったんです」と健二さんは笑顔で話します。家族全員が心地よく過ごせる空間は、自然と健康的な生活を育む場となっています。
インテリアもまた、家族の暮らしを豊かにする重要な要素。家の設計と一緒に提案された家具の中でも、ダイニングテーブルは特に家族全員のお気に入り。「これ以上に良いと思う円形テーブルが本当にないんです」と晶子さん。選ばれたのは、半世紀以上前にフランスの建築家によってデザインされた、特徴的な脚を持つ無骨なラウンドテーブル。少し小ぶりなサイズ感が、3人家族の暮らしにぴったりと馴染み、この空間のゆとりある動線を確保する役割も果たしています。
以前は、新しいものを購入することが楽しみだったという晶子さん。「この家に引っ越してから、その欲求が全くなくなりました。どの家具一つ後悔が無いです。この色も、このチェアも全部」と語ります。
暮らしに直接関わる家具は、色や素材選び以前に、配置の仕方とサイズ選びが、リビングダイニングの間取りや家族の過ごし方にまで影響を与える需要なポイント。設計当初から、夫妻がそれを理解し、信頼を寄せてくれたことが理想の住まいを形にする大きな力となりました。