時代を突き抜ける個性
デンマークの北西部、ストルーア生まれのハイエンドなオーディオ・ビジュアルブランド、バング&オルフセン(Bang & Olufsen 、以下B&O)。電池を使わずコンセントから電源を取れるラジオを初めて世に誕生させてから、100年近い歴史の中で数々の名作を生み出してきた。中でも1996年に発売された6連装のチェンジャー付きCDプレイヤー「BeoSound 9000」は、日本でもそのブランドの名を知らしめるきっかけとなった製品であり、記憶に残っている人も多いだろう。ヤコブ・イェンセンやデビッド・ルイスなど、名だたるデザイナーをフューチャーして世に送り出してきた製品は、そのデザイン性の高さはもちろん、良い意味でそれぞれに違った個性を放ち、これまで18の製品がMoMA(二ューヨーク近代美術館)のパーマネントコレクションに選ばれている。
暮らしのリアリティを再現
2018年9月にオープンした日本橋店もまた、他の店舗とは異なった個性をあふれる空間に仕上がっている。フリッツ・ハンセンやカール・ハンセン&サンなど、デンマークの趣あふれる家具や照明が並び、「音や映像を肌で感じてもらえるように、LDKやプライベート空間をよりリアルに作り込みました」とオープン当時日本橋店の店長だった河野聡さんは言う。内装とインテリアスタイリングを担当した五割一分もその意図を汲み、実際の暮らしを再現した空間造りにこだわった。
オーディオもインテリアのひとつ。部屋に溶け込むかどうかは重要な要素であり、そこで聞く音がどんな贅沢な時間をもたらしてくれるかをイメージしやすい空間になっている。「日本橋店はB&Oの素材感を活かした、どこよりも良い店舗になっているなと感じます。お店の内装を見て、“こんな家にしたい”という声がお客様から上がることも多々あります」と河野さん。
ミッドセンチュリーと最新機器
ブランドの顔となるスピーカーは時代の先を行くデザイン性と機能性で豊富にバリエーションを増やし、イヤホンや電話機、テレビなど、幅広い製品を揃えている。ここ日本橋店が東京の拠点となり、著名な建築家やインテリアコーディネーターも打ち合わせや見学に足を運ぶ。「お店に並ぶほとんどがミッドセンチュリーの家具で、つまりは伝統の中に最新の機器がどう溶け込むかを見せる意味ではとても完成度の高い店舗ができたと思っています」と河野さんは言う。流行に敏感な世代だけではなく、高島屋へお買い物に来られる常連客もふらりと立ち寄り、ソファに座ってくつろぐ姿も見える。誰もが本当の意味でリラックスを体感できる理想の空間は、オーディオ・ビジュアルショップとしての枠を超えた日本橋のランドマークとなりつつある。
DATA
竣工当時の写真はこちらでもご覧いただけます。