もの選びの基準
好きなものが多ければ多いほど、人生はずっと楽しい。「ものが好き」というのは、家を建てる前から夫婦二人の共通点だった。洋服や腕時計などだけでなく、食への探究もひときわアクティブな祐哉さんと、ファッションやメイクなどへの関心が高い香澄さん。今も二人の好きなものは変わらないが、「以前は旬なものやトレンドも追いかけていたけど、それよりも今は、ずっと使いたいと思えるようなモノ選びをするようになった気がします。」と祐哉さん。
そんな二人にとって、インテリアが “自分ごと” になったのは、家を建てると決め、五割一分に通い始めてからだったという。「打合せの時に教えてもらった、デンマーク人が使う“ヒュッゲ” という言葉。家族や友人と過ごす時間や空間、それを豊かにする生活の身の回りの道具も丁寧に選んで永く大切に使う、という考え方にはとても共感しました。」と香澄さんは話す。
使い続ける楽しみ
今はやんちゃ盛りの2才の理継(りつ)くんがいる事もあって普段は必要最低限の物しか置かれないそうだが、この日は取材のためにお気に入りのモノたちを本来在るべき場所に飾ってくれていた(理継くんが保育園から帰宅するとたちまち撤収されてしまったが笑)。「なんでも手にとって放り投げてしまう子どもが小さいうちはしばらくお預けですね」と笑う香澄さん。
お気に入りのソファも汚さないよう、子どもが小さいうちは1枚布をかけたり、ソファの上では飲食はしないように気をつけているのだとか。間に合わせの物を何度も買い替えるより、気に入った物を大切に永く使い続ける楽しみを、この子は生まれた時から自然と身についていくのだと想像すると、とても羨ましくなる。「入居してから買ったルイスポールセンのフロアライトは、買ったその日に子どもが倒してキズがつきましたけどね(苦笑)」と嘆く祐哉さんだが、それもきっといつか良い思い出話になるはずだ。
環境がひとを育む
理継くんが生まれ、家族が3人になったのは、二人の希望の家が建った1年後のことだった。順番が逆であればまた違った家づくりになっていたかもしれないが「子ども中心ではなく、すべて自分たち二人の思いで建てた家。だけど、子どもができてから“こうしておけばよかった…”と感じることはほとんどないですね」と二人は口を揃える。
仕事と子育てに追われる慌ただしい日々にも、暮らしの楽しみは忘れない。「生花を飾ったり、お気に入りの器にどう料理を盛り付けようかと考えたり…。それに、本当に気に入って丁寧に選んできた家具や道具を大切に育てながらの生活も楽しい。この家に住む前にはしていなかったことを今は楽しんでいます」と香澄さん。
キャビネットの上と、壁にかけた額作家・林友子さんの額の中は、その時々の“お気に入り”を飾る場所。子どもが描いた絵や、季節の設えを楽しむ。かつての日本の住宅に必ずあった床の間のようだ。そんなキャビネットがひとつあることで、なんでもない毎日が少し楽しくなるに違いない。
「子どもの成長も家の変化に取り入れていきたいな。良い環境で、良いものを感じとりながら五感を養ってほしいですね」と香澄さん。祐哉さんはポツリと「将来この子が大きくなったら、設計士になってくれたらいいな…」と夢を教えてくれた。
DATA
所在:富山市
竣工:2018年
家族構成:夫婦+子1人
家具・照明 :
・ダイニングテーブル CH006 Table / Carl Hansen & Son
・ダイニングチェア CH88 Chair / Carl Hansen & Son
・ペンダント照明 “The Pendant” / PANDUL
・キャビネット MK Cabinet / Carl Hansen & Son
・ソファ LUNE / FRITZ HANSEN
・フロアランプ VL38 Floor / louis poulsen
・ラグ "VINTAGE" with Fringes / KVADRAT
・カーテン Small Scale & Soft Touch / KVADRAT